証明書の発行対象になる塗装の種類とNGな工事例
増改築等工事証明書は、工事が税制優遇の要件を満たしていることを示すための正式な書類です。外壁塗装においてこの証明書を取得するには、単なる塗り替えではなく、工事内容が一定の性能向上を伴っていなければなりません。特に控除対象となる工事には、明確な「目的」と「仕様」が必要であり、外観をきれいにするだけの塗装工事では対象外と判断されるケースがほとんどです。
対象となる外壁塗装の主な条件は以下のとおりです。
- 省エネ性能の向上(断熱塗料や遮熱塗料の使用)
- 劣化対策(外壁材の防水性や耐久性を大幅に改善する)
- 長期優良住宅の性能評価基準に準拠した改修
- 他の性能向上工事とセットで実施(サッシ交換、屋根断熱など)
・断熱性や遮熱性のある特殊塗料を使った外壁塗装
性能向上が認められる塗料を使用した場合に限り、対象となる場合があります。
・外壁の劣化対策としての下地処理と防水塗装
既存住宅性能評価基準に基づき、性能改善が必要と判断された場合に対象となる可能性があります。
・色替えや見た目の改善を目的とした塗装のみの工事
性能向上が見込めないため、証明書の対象外となります。
・高圧洗浄だけの作業
単なるメンテナンスと判断されるため、証明書発行の対象外。
・DIYによる自己施工の外壁塗装
建築士などの第三者による施工証明が得られないため、対象外となります。
つまり、証明書の取得可否は、「塗装の目的」と「使用する材料の性能」によって大きく左右されます。工事を依頼する際には、見積もり段階から「証明書が発行可能な塗装内容か」を確認し、可能であれば塗料メーカーの性能データを準備しておくとスムーズです。
また、証明書発行には、工事契約書や施工前後の写真、使用塗料のカタログなど、証拠資料が求められるため、施工会社にも証明書対応の実績があるかを確認しておくことが大切です。
バリアフリーリフォームや省エネ塗装は対象か?
証明書の発行条件の中でも、外壁塗装と組み合わせて実施されることの多い「バリアフリーリフォーム」や「省エネ対策」は、非常に重要な要素です。これらの工事と同時に行われることで、塗装工事自体が控除対象工事として認定される可能性が高まります。
省エネ性能を高める外壁塗装の例としては、以下のような工法があります。
- 遮熱塗料:赤外線を反射し、室内温度上昇を抑制
- 断熱塗料:外気の熱を遮断し、冷暖房効率を向上
- セラミック系塗料:断熱性と防水性を兼ね備える
これらの塗装を行うことで、「省エネリフォーム」として税制優遇の条件を満たすことがあり、その際には施工証明書に加え、塗料の性能試験結果やメーカー発行のスペックシートを添付することで、証明書発行の信頼性が高まります。
一方、バリアフリーリフォームについては、以下のような工事が典型例です。
- 段差解消
- 手すり設置
- 滑りにくい床材への変更
- 扉の引き戸化
これらと同時に外壁塗装を実施した場合、セット工事として増改築等工事証明書の発行対象になる可能性があります。
適用可否の判断ポイントは、以下の3点に集約されます。
- 国が定める性能向上基準に該当するか
- 使用材料や工法が規定の技術水準を満たしているか
- 第三者機関が証明できる書類がそろっているか
特に、外壁塗装が「単独」ではなく「他の性能向上リフォームと併せて行われている」ことが、証明書の発行要件に大きく関わるため、事前の工事計画段階から証明書取得を前提にした設計が必要です。
長期優良住宅や既存住宅をリノベした場合の適用要件
長期優良住宅や築年数の経過した既存住宅に対して外壁塗装を行う場合、証明書の発行要件が変わることがあります。これは、住宅の性能評価基準に対するアプローチが異なるためです。
長期優良住宅においては、国土交通省が定める「長期優良住宅認定基準」に基づいてリフォーム計画を立てることで、工事全体が税制優遇の対象となりやすくなります。この基準には、以下のような要素が含まれます。
- 劣化対策等級2以上の取得
- 維持管理対策(配管のメンテナンス性)
- 耐震性能の確保
- 断熱等性能等級の確保(断熱リフォームの実施)
外壁塗装に関しては、劣化対策と断熱性能の観点から該当する可能性があり、建物の全体的な性能向上に寄与する内容であれば、証明書発行の対象として認められます。
既存住宅のリノベーションで証明書を取得するには、次の条件をクリアする必要があります。
- 工事費用の合計が50万円(税込)以上
- 工事内容が性能向上に関わるものであること
- 建物が適法に建築され、登記上の住居として使用されていること
- 完了後6か月以内に居住開始していること
このうち外壁塗装のみを行った場合は、性能向上の明示が求められるため、断熱塗料や遮熱塗料を使っていること、または劣化防止処理が構造的に効果を持つことを証明する必要があります。
一方、リノベーションにおいては他の箇所(浴室、床、窓、屋根など)との複合的な改修になることが多く、その場合には全体で証明書が発行され、塗装部分もその一部としてカウントされる可能性が高くなります。
過去の工事でも証明書は取得できる?あとから発行の可否
外壁塗装をすでに施工済みであり、後から「住宅ローン控除が使えると知った」「証明書が必要と気づいた」というケースも多く見受けられます。では、工事完了後に「あとから」増改築等工事証明書を取得することはできるのでしょうか?
原則として、証明書の発行は工事前または工事中の段階で準備された資料をもとに、建築士などの第三者が実地調査や図面・契約書を精査したうえで発行するものであり、後からの申請では対応できないケースが多くなります。
ただし、以下の条件をすべて満たしていれば、発行可能なケースも存在します。
- 工事請負契約書・仕様書・見積書がすべて保存されている
- 工事前・工事中・工事後の写真がそろっている
- 使用塗料の性能証明書(カタログや製品説明書)を提出できる
- 発行機関(建築士等)による現地確認が行える
このような書類をすべて提出できる場合には、工事完了からおおむね3か月以内であれば「事後発行」に応じる発行機関も一部存在しています。ただし、手続きの煩雑さや追加費用が発生することもあるため、工事計画段階で証明書の取得を前提に準備しておくのがベストです。
・ステップ1 発行可否の確認
必要書類は工事内容の概要、使用塗料の情報、契約書のコピーなど。
発行機関に事前相談が必須で、対象工事かどうかを早めに確認することが重要。
・ステップ2 必要資料の提出
提出書類は工事写真、契約書、図面、仕様書、施工証明など。
書類の不備や記載ミスがあると証明書が発行されない場合があるため注意が必要。
・ステップ3 現地確認(必要な場合)
建築士などが立ち会い、実際の施工現場を確認することが求められるケースがあります。
一部の地域では立ち会い対応が難しいため、事前に可否を確認すること。
・ステップ4 発行と送付
証明書は正本と副本の2部構成で発行される。
発行には手数料がかかる場合があり、費用についても事前に確認しておくと安心。
すでに工事を終えてしまっている方も、書類が揃っていればまだ対応できる可能性はあります。ただし、期限が短いため、できるだけ早く専門業者や証明書発行機関に相談することが重要です。