アクリル塗料
アクリル塗料は、外壁塗装における最もベーシックな選択肢のひとつです。1970〜1990年代に広く使われていた実績があり、現在でも特定の目的では選ばれることがあります。その最大の特長は「価格の安さ」です。塗料の中では圧倒的に安価であり、短期間の建物保護や仮設建物、賃貸物件など、コストを重視する場面で活躍します。
価格の目安は、1平方メートルあたりおよそ1200円〜1700円前後。住宅全体の塗装費用を抑えたいという方には、一定のメリットがあります。
ただし、耐用年数は5〜7年程度と短く、こまめな塗り替えが必要です。また紫外線に弱いため、直射日光を多く受ける南向きの壁面や海風の強い地域では、塗膜の劣化が早く進む傾向があります。
アクリル塗料は一見すると割安に感じますが、再塗装の頻度を考えると長期的にはコスト増になる可能性もあります。リフォームよりも建物の解体・建替えを見据えた物件、もしくは売却前に外観を整えたいなどの目的に最適な選択肢です。
ウレタン塗料
ウレタン塗料は、アクリルとシリコンの中間に位置するミドルレンジ塗料として長年人気を維持してきました。柔軟性があり、木部や鉄部、複雑な外壁形状にも密着性が高いのが特徴です。外壁以外にも、雨樋やシャッター、鉄骨階段などに多用される実績があります。
価格は1㎡あたり1600円〜2100円前後。耐用年数は8〜10年と、アクリルよりはるかに優れた性能を持ちます。仕上がりの美しさにも定評があり、職人の手仕事が際立つ塗料でもあります。
耐久性と価格のバランスから、多くの戸建て住宅リフォームで採用されてきましたが、近年では後述のシリコン塗料の台頭により選ばれる機会が減少しつつあります。ただし、密着力や下地の追従性という面では依然として高評価を受けています。
ウレタン塗料は「万能型」ともいえる汎用性の高さが魅力ですが、10年を超える長期使用にはやや不安が残るため、塗り替え頻度が許容できる住宅や中期視点での外装管理に向いています。
シリコン塗料
現在、外壁塗装において最も多く採用されているのがシリコン塗料です。高い耐候性とコストパフォーマンスを兼ね備えており、一般住宅の外壁塗装ではトップシェアを誇ります。塗膜の表面が硬く、汚れにくい性質を持ち、カビやコケも付きにくいため、美観を長期間保つことができます。
シリコン塗料の価格帯は1800円〜2600円/㎡。耐用年数は10〜15年が目安とされ、コストと耐久性のバランスに優れています。
多くのメーカーが開発を進めており、「水性」「溶剤型」「ラジカル制御型シリコン」など、用途に応じたバリエーションが豊富に揃っています。中でも、耐候性を強化したプレミアムシリコン系塗料は人気が高く、長持ちと仕上がりの美しさを両立した選択肢となっています。コスト面を抑えながら10年以上持たせたい住宅オーナーには、シリコン塗料が最適です。耐久性・価格・見た目の全てにおいてバランスが良く、初めての外壁塗装にもおすすめされます。
フッ素塗料
フッ素塗料は、外壁塗料の中でも高性能・高価格帯に位置するプレミアムグレードの塗料です。最大の特徴は「抜群の耐久性」で、耐用年数は15〜20年以上とされ、再塗装の頻度を極限まで抑えることができます。高層マンションや商業施設など、メンテナンスコストを長期的に抑えたい建物に採用されることが多く、近年は戸建住宅でも選ばれるケースが増えています。
価格は1㎡あたり3000〜4000円前後と高額ですが、塗り替えの頻度が少なくなるため、長期的にはコストメリットが生まれます。また、耐候性だけでなく、汚れにくさや色あせのしにくさも優れており、外観の美しさを長く保つ点でも注目されています。
とくに沿岸部や日差しが強い地域においては、フッ素塗料の恩恵を強く感じることができます。初期費用はかかっても、20年以上美観と性能を維持できることを考えると、高額でも採用する価値は十分にあると言えるでしょう。
気密性の高い住宅や日当たりの良い2階建て住宅など、遮熱対策が必要な条件が揃っている場合は、導入する価値があります。断熱性だけに期待しすぎるのではなく、複合的な機能の一つとして評価するのが理想です。環境性能や光熱費削減に敏感な家庭には、今後ますます主流になっていく塗料といえるでしょう。