電気メーターやメーターボックスの塗装は法律的に可能か?
結論から述べると、電気メーター本体の塗装は原則として禁止されています。理由は計器そのものが電力会社の所有物であり、視認性・安全性・法令遵守の観点から塗装による変更が認められていないためです。一方で、メーターボックスや取付板など、家屋の一部として設置されている部材については、所有者が塗装可能なケースもあります。ただし、塗装前には必ず管轄の電力会社や施工業者と確認を取り、適切な対応が求められます。
電気メーターに関しては、国が定める計量法により、改変や加工が厳しく制限されています。たとえば、東京電力や関西電力などの大手電力会社では、「電力量計(電気メーター)はお客さまの所有物ではなく、当社所有のため加工・塗装・移設などはご遠慮ください」と明記されているケースも多く、誤って塗装してしまうと違反になる可能性もあります。実際に電気メーターの表示が見づらくなったことから交換を命じられ、追加費用が発生した事例も報告されています。
しかし、メーターボックスや取付板については話が別です。これらの部材は住宅の外壁や付帯部分と一体化している場合が多く、所有者の判断で塗装が可能なことが多いのです。特に樹脂製や金属製のメーターボックスは、経年劣化により色褪せや変色が起こるため、外壁塗装時に合わせて美観を整える目的で塗装されることも一般的です。
塗装の可否を判断する上でのチェックポイントを以下に整理しました。
対象部材 |
所有権 |
塗装の可否 |
注意点 |
電気メーター本体 |
電力会社 |
原則不可 |
視認性が落ちる塗装は計量法違反になる恐れあり |
メーターボックス(樹脂) |
施主または建物所有者 |
可(事前確認推奨) |
熱膨張しやすいため専用の下塗りと密着性のある塗料を使用 |
メーターボックス(金属) |
施主または建物所有者 |
可 |
錆止め処理と下塗りの適用が必要 |
メーター取付板(木製) |
施主または建物所有者 |
可または交換対象 |
劣化が進んでいる場合は交換が推奨される |
塗装してはいけない素材や状況とは?
電気メーターやその周辺設備を塗装する際には、素材や設置状況によっては塗装を避けるべき場合が存在します。塗装によるトラブルは単に見た目だけの問題にとどまらず、安全性や機能性を損なう危険性もあるため、正しい判断と知識が求められます。
まず注意すべきは、塗装不適合素材です。メーターボックスに多く使用されているのが、以下の3つの素材です。
素材タイプ |
塗装の適合性 |
避けるべき状況 |
樹脂製(ABS、PVC等) |
中程度 |
高温環境、密着性の低い塗料使用、下地処理不足 |
金属製(鉄、アルミ) |
高い |
錆処理なし、密着プライマー未使用 |
木製取付板 |
低い |
腐食進行、塗装が密着しない、内部腐れや虫食いがある場合 |
特に樹脂製のメーターボックスは、外観上は塗装可能に見えても、表面が滑りやすく塗料が剥がれやすい特性があります。高温多湿の地域では熱による膨張と収縮が激しく、ひび割れや剥離が起こりやすいため、専用のプライマーを使用した下地処理と、密着性に優れた塗料の使用が必須です。
また、塗装すべきでない状況としては、以下のようなケースが挙げられます。
- 電気メーター本体に直接塗料が付着する場合
- 表示部(計量表示窓)や通信装置部分をマスキングしていない場合
- 雨天時や気温5度以下など、施工不適合な環境下での作業
- 高圧洗浄後の乾燥不足で湿気が残っている状態
- 旧塗膜が剥がれやすい状態で再塗装する場合